神戸地方裁判所 昭和24年(行)70号 判決
原告 西宮市今津土地区画整理組合 ほか一名
被告 兵庫県知事
一、主 文
原告等の訴を却下する。
訴訟費用は原告両名の連帶負担とする。
二、事 実
一、原告等の請求の趣旨
被告が昭和二十四年九月三日兵庫縣告示第六二八号で、自作農創設特別措置法第四号の規定によつてした指定処分中、その指定地区西宮特別都市計画復興土地区画整理地区の区域表示において同告示別紙図面中1の地区を除いている部分を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、請求の原因
原告両組合は都市計画法第一二條により土地区画整理を行い、宅地地域を作るため成立した法人であつて、その事業地域は西宮市域の東より、特別都市計画法の戰災復興土地区画整理地域内にあり、すでに仮換地、施行工事を終り、道路電気ガス溝などの諸施設を整えるに至つている。そういう状態なのであるから、原告等組合の事業地域内にある現況農地の土地も、当然、自作農創設特別措置法第五條第四号の規定による買收除外の指定を受けるべき土地であるのに被告は昭和二十四年九月三日兵庫縣告示第六二八号により、前記買收除外の指定処分を西宮特別都市計画復興土地区画整理地区につき行つた際、その区域表示を告示附属図面で行い、その図面中原告等事業地域に属する(1)外三の地域を右指定地から除外した。すなわち、被告は前に述べたように、当然買收除外地と指定されるべき(1)の地区をその指定から除外したのは違法であるから、その取消を求める。
三、被告の申立
原告等の訴を却下する。
訴訟費用は原告等の負担とする。
四、被告の陳述
1、原告等は本訴について保護を求める利益をもつていない。すなわち、原告等はその主張の土地の所有者でなく、單にその土地について宅地としての利用を増進するための土地区画整理施行を目的とするものなのであるから、右土地の買收による権利の喪失あるいは宅地化の不能によつて、直接その権益を侵害されるわけはなく、またその土地について行う原告等の土地区画整理事業が不能になり、不利益を受けるわけでもない。すなわち、右土地が自作農創設特別措置法により買收されて政府の所有となり、さらに賣渡によつて第三者に移轉しても、その土地は原告等の事業施行地から脱落するわけではなく、單にその旧所有者の原告等組合員としての地位が、政府あるいは買受人に移轉継承され組合員の変更が生ずるだけなのであつて、原告等の事業はこれによつて不利益を受けることもなく、不能となることもない。結局、原告等は本訴において保証されるべき何等の利益をもつていないので、その訴は不適法である。
2、原告等が取消を求めている行政処分は存在しない。
被告は昭和二十四年九月三日兵庫縣告示第六二八号で、同告示附属図面中(1)(2)(3)(4)の地区を除いた図示の地区について自作農創設特別措置法第五條第四号の規定による買收除外の指定をした。
右処分は、右のように表示された一定の地区内の土地につき買收除外指定をしたものであつて、(1)(2)(3)(4)の地区を買收除外地として指定しないという処分をしたものではないのであるから、原告等のいう右告示中(1)の地区を除いた処分というような行政処分は存在しないのである。存在しない処分は取消せない。
また原告等の請求が右(1)の地区を買收除外地に含ませるよう右告示の変更を求める趣旨であるならば、それは新たな行政処分をなすことを行政廳に命ずる判決を裁判所に求めることとなり、法律上このような訴は許されない。
三、理 由
原告等は、都市計画法第一二條の規定による土地区画整理を施行するため設立された法人であつて、その主張する(1)の土地は原告等の事業施行区域内の土地であると主張し、右土地が自作農創設特別措置法第五條第四号のいわゆる買收除外指定を受けるべきことを求めているのであるが、そのような者として原告等は本件行政処分の取消について訴を以て保護されるべき利益をもつ者であろうか。右土地の從來の所有権、その他の権利者は、その土地が原告等の施行する土地区画整理事業の区域内に編入されることによつて当然その権利を失い、原告等組合が代つてその権利者となるものであるとする法律上の根拠はないのであるし、原告等がその他の理由で右土地の権利者となつたものであることは、その主張しないところである。
從つて原告等は右土地についての所有権者でなく、その権利者は原告等以外に存在するわけであるから、右土地について適法な買收除外指定のあること、ひいては買收されないことについて、その直接の権利者として訴により保護を求める利益はないというべきである。
それならば、原告等は、右土地について買收除外指定がなされず、あるいはさらにすすんでそれが買收されると、そのことによつて、その事業施行が不能あるいは因難となることにおいて、本訴について利害をもつ者であるかといえば、そうとも思はれない。すなわち右土地が買收されてもそれは当然原告の事業施行地から除外されるものでなく單にその新な所有者(政府または買受人)が旧所有者に代つて原告組合員となるだけなのであり、そのことによつて原告の事業執行が法律上不利益を受けるわけではないし、その他自作農創設特別措置法によつて本件土地が買收されることによつてその所有権者その他の権利者が不利益を受けることを別として、原告等自身がこれ等のものとは別の不利益を受けると解すべき根拠はない。
もとより本件土地につきその宅地としての利用を増進するため土地区画整理を施行することを目的とする原告等は本件土地が農地であることからその事業遂行につき諸種の法令上の制限を受けるではあろうが、それは本件土地が農地であることから出てくる制限でそれについて買收除外指定があることはそれを農地でないとするわけでもないし、農地としての制限を排除する原因となるわけでもない以上、原告等が、特に本件買收除外指定について訴を以て保護を求める利益は認められない。(原告等は、農地についてのみ認められている買收除外の指定を本件土地について求めているのであるから、それが農地であることを自認しているわけである。)
以上のように、原告等は本訴について保護されるべき利益をもつ正当な当事者とは認められないので、その提起した本訴はこれを違法な訴として却下し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九條第九十三條第一項但書を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 石井末一 西川正世 北後陽三)